「映画篇」金城一紀
「映画篇」金城一紀
映画をモチーフにした書下ろし連作集。区民会館での「ローマの休日」上映会を軸に、五つの物語が微妙に絡まっているというのがミソ。読んでいて思わず映画を観たくなってしまう、そんな映画への愛に満ちた文章が全編に溢れている。この作家はブルース・リーが大好きなようで、ブルース・リーについては「GO」でも語られていたけれど、今回の作品でも何度も語られている。僕も小さい頃、兄貴がブルース・リーを好きだったので何度か観たのだけれど、また観てみたくなった。二人してブルース・リーの真似をしたのが懐かしい・・・。
それにしても、金城一紀はなんて泣ける物語を書く作家なのだろうと思う。アウトサイダーでありながら、いやアウトサイダーだからこそロマンチストで、夢を追って、愛を信じて。シリアスなものを抱えていても、それをユーモアで包むポジティブさも最高だ。
くだらなさが無駄にループするような生活を送っている僕だって、いつか本当に生きていたいと思っていたりする。金城一紀の小説を読むと、そんな気持ちを強くしてくれる。彼の言葉を借りれば、僕ら読者は彼の小説を読むことでクソみたいな現実から飛翔することができるのだ。
(以下、ネタバレあり)
今回の作品集はどれも独立して読めるのだけれど、冒頭の「太陽がいっぱい」が断トツでグッと来る。「僕」と龍一の物語。逆境の中での純粋さと友情の描写が、たわいないようでいて美しい。やがて大人になっていき、別々の道を歩くようになる二人。やがて、かつての友を救おうとする「僕」の姿が格好良くて憧れてしまう。
次に好きなのは「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス」。照れ隠しのようにユーモアが散りばめられているけれど、こちらは恥ずかしくなるくらいイノセントなラブストーリーだ。青春という文字が頭の中で躍りだしそうな、愛すべき二人の物語。「GO」にも同様のエッセンスはあったけれど、こういうのはかなりツボ。
最後を飾る「愛の泉」はおばあちゃんの為に「ローマの休日」上演会を企画する話。気楽に読める家族の物語。ここは素直に鳥越家の孫達のキャラと会話を楽しめば良い。
五編ともハッピーエンド、もしくは救いを持たせて終わるというところは相変わらず。やっぱりロマンチストだ。ここのところ、あまり読みたくなるような小説が無かったが、金城一紀はやはり別格だった。僕にとって金城一紀は、信頼できる兄貴のような作家だと再確認。推しの一作。

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